まじないの召喚師 ー生まれ変わりの花嫁ー
ある男の処分
あの日、当主に焼かれ、数日後に体は死を迎えた。
先が長くないとわかっていた我は準備した。
生き返る準備だ。
家にあった書物を再度読み込み、諸々の道具を用意。
魔法陣の上で息を引き取ったところで、自動的に発動する。
我が死体に、我が魂を定着させ。
我は、死霊術師として蘇った。
そこからは、その辺の地縛霊や浮遊霊などを集めて回り、使役した。
どんなに雑魚で無害な霊だろうと、集団になると強い。
毎年溢れるほどにいる海には一体もいなかったのは想定外だが、それでも結構な量の戦力が集まった。
戦力を集め、機を伺っていた。
当主が、家族だけで山にキャンプに行く情報を掴み、計画を立てた。
コノハナサクヤヒメの魂を手に入れ能力を奪い、桜陰、陽橘、当主を血祭りにあげる。
欲を言うなら、スサノオノミコトの能力も欲しいところだが、奴の居場所はわからない。
我が計画は今用意できる最善な筈だった。
陽橘から離れたコノハナサクヤヒメを狙って、たまたま居合わせた不幸な小娘を先に手駒に加える事にしたのだが。
………あの小娘がツクヨミノミコトだと?
不幸だったのは我の方だとでもいうのか。
我が配下の死霊達を全滅させやがって。
あんなぽっと出の奴に負けてたまるか。
桜陰に庇われた形になるのは気に食わないが、我はこんなところでは終わらない。
「ワレハマダヤレル……」
復讐は終わらない。
必ず、我を馬鹿にした奴らと、我が力を評価せず排除した火宮当主に鉄槌を。
「いいや、ここまでだ」
声が聞こえた瞬間、全身が炎に包まれた。
声を上げる間も無く、肉体が塵となり、風に攫われた。
魂も、肉体と共に燃え尽きたと自覚する間もなく…………。