2ねんせいの夏。
家では、貴が一人だらだらしている。

コックさん親子が海に出かけた皆のお弁当を用意し、届けに行く準備をしている。

『なんだったら、お二人も海で楽しんできたらどうですか?』

お手伝いさんのあかねさんが言う。

『そうですよ。』

お手伝いさんのなつ希さんも言う。

『この歳で海か…』

コックさん親子の父、草介さんが言う。

『泳ぐ気かよっ!』

息子、浩介がつっこむ。
にぎやかな会話のなか、貴が起きてくる。

『貴君も行くんだろ?一緒に車乗ってくかい?』

草介さんが聞く。

『いや…いいです。先行ってください。』

貴が言う。行く気もないのに『“先”行ってください。』って。

『じゃあ、行ってくるよ。』

コックさん親子は出かけて行った。
一段と静かになる家のなか。


電話が鳴った。


貴が立ち上がり電話に出る。


相手は貴の母親だった。

『どうしたの、忘れ物でもした?』

その後貴は黙ったまま。


『どうかした?』


あかねさんの声も耳に入らない様子。





『父さ…が…事故…?』
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