2ねんせいの夏。
そんな先入観がなかったら、
俺は何か、
特別な夢をみつけて、
それを追う人生を送っていただろうか…

弟の面倒はよくみた。
ほかのきょうだい達にもそれなりに慕われた。
勉強もスポーツも出来て、友達も多く近所では

“自慢の跡取り息子”

で通っていた。

“自慢の跡取り息子”は、高校に入って、それなりの日々を送っていた。

ある日珍しく早く帰るという父親を、家のすぐ前で弟をあやしながら待つことにした。

父親の車の音は、
家のすぐ近くからしたが、
しばらく近付く気配はなかった。

近所のおばさんと話す父親の会話を、聞くつもりはなかった。

『いつも貴君には感心します。さっきも潤ちゃんの子守してましたし。』

『こういう環境ですし、しっかりせざるをえないんでしょうね。長男ですし、とはいえ、助かってます。』

聞くつもりはなかった。

『しっかりしたいい跡継ぎじゃありませんか』

『そうですか?でも継いでもらおうとか思ってないんですよ?』

聞くつもりはなかった。

『あら、もったいない』

『あの子達にも夢はあるでしょうから。』




ないよ…
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