2ねんせいの夏。

夜明け

勢い良く立ち上がった貴は、本棚に少し肩をぶつけた。

その振動で落ちてきた分厚い難しそうな本は、貴の頭をかすめ、床に落ちた。

その本の間から飛び出した、一枚の紙切れを見た貴は、
本を本棚に戻しながら一言呟いた。


『分かってるんだよ…』


紙切れに書かれた、たった一文。


“今こそ、大人になるときだ。”






家に着いた貴は、勢い良く玄関の戸を開けた。

そこには、海から戻ったきょうだい達と、お手伝いさん達がそろっていた。

『どこ行ってたんだよ。』

冷静に聞く宏。


『父…父さんは…?』


宏を無視してたずねる貴。


『大丈夫よ?貴君、最後までちゃんと聞かないから。』

あかねさんが言う。

『お母さんの方も慌ててたみたいだから、ちゃんと内容伝わらなかったのかな?』

なつ希さんが言う。


『骨折とかすり傷だけですんだみたい。それでも大変だけどさ、命に別状はないよ?』


宏が言う。


『貴…?』


気が抜けたのか、
貴はその場で倒れて気を失った。
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