2ねんせいの夏。
質問攻めに修は困っている様子だった。

話題を変えようとする修に、それとなく空気を読んだ貴が言った。

『今ここには、早く帰らなければならない奴はいないみたいだよ?』

その一言に諦めたかのように、修は話し始めた。

自分の気持ち―――。

『両親から離れたかった。
あの人たちはやさしすぎる。僕が本当の子供じゃないからとか、そんなんじゃなくて、本当の子供だとしても。』

『えっ……と…、自慢ととらえていいのかな?』

『春っ、黙って。修、続けて。』

『そう。自慢になる人達なんだ。だから嫌なわけ。』
『どういうこと?』

『家族は一番身近な大切なものだと思う。大切なものを失うのは一度で十分でしょ?
新しい大切なものが出来たら、また失うかもしれない恐怖と戦って生きなければならないと思うわけ。』

修は家族を一度失ってる。
5歳児が味わった家族の死――。

『…。』

『だから大切なものをつくらなければ、失わないですむ……。』

『で、新しい家族と距離をとって、世話にはならないと……?』

『もう十分世話にはなったよ。だから…』


『何言ってんだよ。』
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