2ねんせいの夏。
『本当に―――。

名前だけの存在って諦めてる自分に、声かけてくれる人がいるなんて、
それだけであの日、親の目を盗んで学校に行っただけの価値はあったんだよ。』

『辿り着けなかったけどな。』

『うん、母さんは心配しすぎなんだ。』

『そりゃ心配するだろ。』

春が言った。
皆が頷いた。

『高校だって、無理さえしなければ行けたのに、“いつでも行けるんだから今は完璧に病気を治す事を、考えましょうねっ”、だってさ。』

『それでいいんじゃないの?』

『よくないよ。
病気の事ばっかり考えてたら何も出来ない。治るものも治らない気がして…。』

『そんなに悪いのか?病気。』

『今はもう大丈夫なんだよ、本当に。』

『じゃあ、もう少し我慢すれば?やりたい事なんて、いつでも、いくらでも出来るようになるさ。』

『わかってても、絶対なんてないから。』

『…どうした?』

そこにいる全員が見つめるなかで、太陽の一番の悩みがとびだした。

『小さい頃から僕には絶対なんてなかった。
明日が来る事さえ約束されない時期だってあった。』

四人は
真剣に聞くことしか出来なかった。
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