2ねんせいの夏。
夢を奪った奴を許すことは

出来ますか?―――――


『野球やってんのか?』

そう言った男に

『やってるわけないだろ、お前、自分のした事も忘れて俺のところに来たのかっ?』

どうやら男は春の過去に
深く関わった人物らしい。

春から野球を奪った男――。

『俺、今何やってると思う?』

男が聞いた。

『別に知りたくもねぇ。』
『ふつうのサラリーマン。』

そう言うと
男は一人で語り始めた。

『お前が高校辞めてから、』

『辞めさせられてから、だろっ。』

『辞めてから、
辞める前も含めて俺は、
何人お前みたいな奴を
蹴落としたか分からない。
自分がレギュラーになるためだったら、何でもやったし、やらせた。

でも、この様だ。

プロどころか大学では
レギュラーにさえなれず、
今ただのサラリーマン。

人蹴落として上ったところは
頂上じゃなかったよ。

蹴落としても

頂上なんか行けねぇんだな。』

『あたりまえだっ。』

『そんなことも、
あの頃の俺には分からなかったんだよ。“必死”だったから。』

『必死でやること間違えて、
俺より馬鹿な奴始めてみた。』

嫌味を言う春に、
その男は素直だった。
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