2ねんせいの夏。
『太陽もね。』

母の言葉にうつむく太陽。

『太陽が産まれる時、
お父さんもお祖父ちゃん、
お祖母ちゃんもすごく楽しみで、
男の子派と女の子派で分かれたんだけど、産まれるとなったらもうそんなのどうでもよくって、

無事に産まれる事だけ祈ってたって。
で、無事に産まれてくれた赤ちゃんに今度は付ける名前でもめて…』

『……。』

『お父さんの意見が通って
“太陽”になったの。
太陽なんて珍しくないかもしれないけど、由来が良かったの。

“この世にたったひとつだけ”

の、ものの名前。
あなたは私達のたったひとりってこと。
大切なひとりってこと。』

『………。』

『たったひとつだから、
たったひとりだから、

なくなると困るの。
失いたくないの。

うるさく言って失わないですむなら嫌われてもしょうがないって、
しつこく言って守れるなら悪者になっても我慢しようって。』

『親って大変だね、
子供を守ることが、嫌われることだなんて。』

奈々が言った。

『いつかそれが子供にも伝わるといいんだけど。』

亜子が言った。

『十分伝わってるよ、
ずっとずっと前から。』

春が言った。
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