2ねんせいの夏。
空には花火が満開だった。

皆本当に楽しんだ。

午後9時。

最後の花火のあと、皆が拍手をした。
その拍手が招いたかのように、六人の親達が屋上の扉を開けた。

『いやなんか歓迎されてる?』

貴、慎、潤の父親が冗談で言った。

『違うよ。』

慎が冷ややかにつっこむ。

『遅い!』

健が、潤が、奈々が声をそろえる。

いつもの帰宅時間を考えれば、早い時間帯だが、花火大会には間に合ってはいないので“遅い!”である。

『いやいや、いつもの事ながら悪いねぇ。』

宏、亜子の父親が言った。

『さ、始めようか!』

奈々、健の父親が言った。

『始めるって…花火はつい今、終わったの!』

奈々が言う。

それを聞いていないかのように六人の親達は、椅子を並べて席に着く。
しかも、さっきまで花火が上がっていた海の方向とは真逆の、山の方を向いている。

『何がしたいの!?』

貴が聞く。

『いいからいいから、皆、あちらを注目』

貴達の母親が山の方を指差す。

そして携帯を握った貴達の父親が言った。

『お願いしまっす!』
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