2ねんせいの夏。
心の父親が三家族の親達に挨拶に行くのが見える。
心の父親は会社の社員で、社長に挨拶に行くのは当然だった。

『早くからお邪魔しています。娘と共にお招きいただきまして。』

心父は頭を軽く下げる。

『なんだよ守!堅っ苦しい奴だなぁ!』

宏達の父親が言った。
“守”とは心父の名前で、心父は三家族の父親達の大学の後輩で仲良しの友達だった。

『でも…』

『はいはい、堅苦しいのはなしなしっ。』

『はい…』

『心ちゃんにはいつもうちの子達もお世話になって。』

『いえいえっ、こちらこそ。』

三家族の親達は、七人の子供達をまとめて“うちの子”と呼ぶ。

『お姉さん、お邪魔してます。』

真砂希の母親が宏達の母親に声をかけた。
真砂希の父親と宏達の母親は姉弟だ。

『真砂希、頑張ってるみたいね。』

『うん、やりたい事がいっぱいみたいで。』

『うちのはどうなんだろ…』

『結構いろいろ考えてるんじゃないかなぁ、宏君も亜子ちゃんも頭良いし。』

『頭良くてもその先がね、見つかんないと…』

『大丈夫よ!』

『はぁ…』

ため息ひとつ。
< 96 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop