彫刻
ホラーブーム
『超常現象』

それは、誰も気がつかない間にやってくる。

あなたがもし、得体の知れない冷気を感じたら、もうすでに『恐怖』の真っ只中に迷い込んでいるのかもしれない。一度踏み入れたら二度と逃れることのできない『恐怖』という檻の中に・・・。

どの雑誌にも必ずこういったたぐいの記事が掲載されていた。『ホラーブーム』到来とかで、どこの雑誌記者も、この手の取材にしのぎを削っていた。

もともとホラーの人気は高かったが、世界的に日本のホラーが注目を集めたせいで、このブームを呼んだらしい。読者の興味を引く記事を載せた雑誌は、ここ最近飛ぶように売れるようになった。特に読者から寄せられた心霊体験談のコーナーは人気が高く、各雑誌は相当力を入れているようである。

雑誌記者たちは、次々に寄せられてくる情報から、真実味のある体験者の話を元に、昼夜を問わず心霊スポットの取材に走り回り記事にした。そして集められた数々の心霊体験の恐怖を掲載していった。やがて、読者の中には、自分たちで実際に心霊スポットへ出かけ、その恐怖を楽しむ者まで出始めた。

あるテレビ番組で、霊能力者が、こういった行為の危険性を訴えた。

「心霊スポットや霊に関する体験談など、さまざまな情報が氾濫しているようですが、決してこれらを甘く見てはなりません。ごく希に、我々でも手に負えないほど危険な『怨霊』や『悪霊』と出会ってしまうこともあるのです。実際、私の知る体験者の中には、恐怖で口にすることさえ脅え、霊から逃れるように、ひっそりと暮らす者もいるのです」と。
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