彫刻
出身地
黒川は、一刻も早く葉書の主のところへ飛んでいきたかったのだが、記載されている電話番号にいくらかけてもつながらない。

♪ケロケロケロケロケロ~・・・ケロケロケロケロ~・・・♪

黒川の携帯電話が鳴った。ケロさんからの着信音である。

「もしもし、ケロさん?なにかわかった?」

「スミちゃん、ずいぶん手こずっちまったけど、だいたいの素性はわかったよ。こっち来るかい?」

編集長に行き先を伝えてケロさんの探偵事務所に向かった。

ケロさんは今日も趣味の悪いネクタイをしていたが、いつものことと気にならなかった。それより、毛むくじゃらの指にはめられた幅の広い指輪の似合わなさには失笑した。

「これが調査結果だ。今の時代、個人情報機密がどうのこうのってうるさいし、やっこさんあちこち住まいを変えてやがるし、ほんと苦労したよ。まるで逃亡者なみだね」

ケロさんが調査内容をわざわざワープロで打ち出してくれていた。

「ケロさん、恩に着ます!」

ケロさんに向かって、軽く投げキッスのしぐさを見せた。天井を見上げて奇声を発した蛙男は、両手を広げて抱擁を求めたが、黒川はすでにソファーに腰を下ろし調査書類に見入っていた。

石田ジンの個人情報がずらりと並んでいた。黒川は石田の出身地を見て、はっとした。

「この出身地・・・あの葉書の主と同じ村だわ」

頭の中で、今まで、もやもやしていた物が繋がったような気がした。そして同時に、石川も葉書の主の父親も同じ恐怖の体験者であると確信した。
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