彫刻
葉書の主、林 イスケ 46歳。180センチはありそうな長身で、肉体労働者なのかとてもがっちりした体型だった。少しごつごつした顔はよく日に焼けている。見た目に似合わずとても物腰が柔らかそうな丁寧な話し方をする。

「わたくし、こういう者です。葉書を読んで、ちょっとお話を聞かせもらいたいと思いまして。突然お伺いするのはご迷惑かと思いましたが、電話がなかなか繋がらなかったもんですから」

「え~!まさか。記者の方がわざわざこんな遠いところまで来てくれるとは思いませんでしたよ、すいませんでしたね、なんにもありませんがまぁ上がってください」

林は黒川を広間に通し、地元で採れた熱いお茶と、色んなせんべいをつめこんだ菓子入れを、申し訳なさそうに差し出した。

「すいませんこんな物しかなくて。母はもう早くに亡くなってるし、父が死んでから、私しかいないもんですから」

「えっと、林さんは、ご家族は?・・・」

「私・・・恥ずかしながら、ばついちです。子供はいません!」

林は、姿勢を正して緊張気味にそう言った。

(お見合いじゃないんだから)黒川は噴出しそうになった。
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