彫刻
「そうだ、大阪の出張で私が留守にしていた頃、親父に何があったか色々私なりに調べてみたんですよ、そしたらある事件の記事を見つけましてね。どうやらそれがかかわっているようなんです」

林はいったん席を外し、しばらくして古い新聞の切抜きを持ってきた。

「これちょっと読みにくいですが、ちょうど20年前この村の住人に起こった事件なんですがね、一晩のうちに7人の人が何者かに目玉を繰り抜かれたいらしいんです」

「目玉を?誰がそんなひどいことを?」

「わからずじまいです。迷宮入りっていうんですかねぇ。新聞には詳しく載らなかったようですけど、結局、鳥かなにか獣に襲われたってことになったようです。生まれてずっとここにいますけど、こんなひどい事件は、後にも先にもありませんから、これが父となにか関係しているんじゃないかと思いましてね」

「でも、おかしいですね、この記事では被害者はみんな生きてるんでしょ?誰も犯人がわからないなんて不自然じゃないですか?」

「それが、被害者7人とも全員が、発見されたとき、おかしくなっちゃってたんですよね。何を聞いてもじ~っとうつむいたまま、ひどい怪我なのに全く痛がりもしなかったとか。治療を受けたあとみんな専門の病院に入院したって聞いてます」

「もしかして、その第一発見者があなたのお父様、だったとか」

「はい、わたしもそうなんじゃないかと思って村の駐在さんとかに聞いてみたんですが、なんせ20年も前のことなんで」

「そして、お父様はその犯人を見た、あるいは出会った可能性もありますね。発見された現場はご存知ですか?一度見てみたいんですけど」

「いいですよ、私の軽トラで行きましょうか、すぐつきますんで」
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