彫刻
「黒川さん?」林の声がした。

教室の入り口からまぶしい灯りに照らされ目がくらんだ。

(林さん!助けて!)

「すいません遅くなっちゃって、暗くなりそうだったんで、宿直室から懐中電灯を取ってきたんですよ。・・・黒川さん?・・・どうかしたんですか?」

「そこ・・・、お、男の子・・・」

「え?男の子?」

林は懐中電灯で教室の中を照らした。

「誰もいませんよ」

今、目の前にいたはずの男の子の姿はどこにもなかった。

「林さん、とにかくここを出ましょう」

黒川は林の腕を引き、足早に校舎を出た。林の腕をつかんだ手が小刻みに震える。

林は黒川のただならぬ様子を見て、とにかく家に戻ることにした。
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