彫刻
「ルリから取り上げた目玉なんか、とっくに腐ってしまって、使い物にならないらしいよ・・・ククク・・・それでな、あんたの目が見えたって言うんだ。よこせって言うんだ、あんたの目。ずいぶん綺麗だからな」

あの晩、石田がバックミラーから、じっと自分を見つめていたことを思い出した。

「で、あいつは、今日はここにいる女の目玉で我慢してやる、って、女房の目玉をもって行きやがった。あの女を連れて来ないと、次は、お前と、お前の娘の目玉を喰うからな。って、そういい残して。ククク・・・」

石田は、完全に正気を失っていた。黒川は、まだスイッチの入っているICレコーダを握り締めながら言った。

「石田さん、いいかげんにしてください!どういうつもりか知りませんが、この会話はちゃんと録音されているんですよ!」

「もう必要なくなるさ。あんた、知りたがっていたじゃないか。『本当の恐怖』を・・・さぁ、自分でじっくり確かめるがいい。もっとも、確かめた後はもう廃人だけどな・・・ククク」

「ちょっ・・・、石田・・・さん」

石田は、まっすぐ黒川の目を見つめて言った。黒川はやっと気づいた。今、自分は檻の中にいると。

石田は、黒川を残し、部屋から出た。

ピシャリと扉を、閉める音。

すぐに、部屋の中から、あの音が聞こえる。

ギュィ~ッ、ギュィッ。ギュィ~ッ、ギュィッ。

そして、水っぽい音。

ぐちゃっ、ぶちゅぶちゅ~、ぶちゃっ。

ぐちゃっ、ぶちゅぶちゅ~、ぶちゃっ。・・・


石田は、台所の入り口で、ゆらゆら揺れる女房に声をかけた。

「もう、終わるからね・・・」

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