虹色の愛
再会
〇宿舎雅・3号棟・リビングルーム(夜)
空野さくら(16)の腕を牧野はじめ(22)と立石一馬(22)が取り合う

さくら( 母の実家の宿の手伝いに来ているはずが、いつの間にかこんな状態になってます。)
一馬「はじめ!さくらを離してよ!」
はじめ「何言ってんの?今日は俺と約束があるの!ねぇ?さくら?」

夜永わたる(22)がさくらを2人から引き離す

わたる「仕方ない。こ、ここは俺がさくらの勉強を見てあげよう。」

わたる、照れながら大きな手でさくらを捕まえる
植野涼(22)、ダイニングの席にすわっている。そのままさくらとわたるがいる後ろを振り返る

涼「さくら、そんな体力おばけより俺の方がいいよね?」

涼、ニヤッと笑う
さくら、困り顔になる

さくら「まぁ、植野さん医大生ですので…」

深作翔太(22)、さくらの髪を触る
さくら、驚く

翔太「さくらちゃん、今日お風呂入ったら僕がお手入れしてもいい…かな?」
さくら「え、ええ。あ!一昨日やってくれたのすっごくよかったです!」

さくら、笑顔を翔太に見せる
全員(かわいい)

糸、さくらをわたるから引き剥がす
さくら、糸に肩を抱かれ糸を見上げる

さくら「いと兄」
糸「お前ら、さくらはバイトしに来てるだよ。まだ仕事が残ってる。」
はじめ「いいじゃん!糸がやりなよ!」
糸「だーめ!」

糸、さくらを離す

糸「さくら、夕飯の片付けお願い」
さくら「うん」

糸、頭をポンポンする
さくら、少し驚く

糸とさくら以外「あーー!」

糸、舌を出して意地悪な顔をする
6人が言い争ってる。
さくら、ため息を吐きキッチンに向かう
さくら、キッチンでかたづけをはじめる
キッチンの時計に8月7日と表示されている

さくら(ここに来て1週間。最初はただのバイトだったのに…。いつの間にかみんなの玩具です)

〇東京・マンション一室空野家(夏・朝)
テロップ「1週間前」
さくら(16)の目が開く
身体を起こし、ベッドのとなりのサイド机にあるメガネをかける。

さくら母「さくら、今日もそのメガネかけるの?」
さくら「うん、別にいいでしょ。」

さくら、テーブルに座り朝食を食べ始める
向かいに父が座っている

さくら「おはよう」
さくら父「おはよー」

食べた食器をキッチンに運ぶ父
さくら母が洗い物をしはじめる

さくら父「美和子さん、今日からもメガネするの?」
美和子「ええ、そうみたい。1度好きになると止まらないのよねー相変わらず」
さくら父「ま、そこもさくらのいい所でしょ?」
美和子「いい所でもあるけど、悪い所でもあるの」

さくらのスマホの日付が8月1日と表示されている。

〇栄島・松崎家
糸父が新聞を読みながら、ソファで横になる
糸母は荷物をまとめている

糸「父さん、具合どう?」

糸、寝起き

糸父「ぼちぼちだよ。まぁ、心配するな。手術終わったらすぐ治るから。それよりも糸、宿舎頼むぞ」
糸母「一応、バイトの石井くんたちもいるし、コレからお姉ちゃんも来るから大丈夫よ。まぁ、何かあったら連絡しなさい。父さんが入院してる間、あんたが責任者だからね。」

糸、着替えるために部屋へ戻ろうとする

糸父「あれ?さくらも来るの?」

糸、止まる

糸母「言ったじゃない!さくらも手伝ってくれるのよ。ね?糸?」
糸「え、俺も聞いてないよ」

3人が沈黙する

糸母「…えっと?言ってない?」

糸母、苦笑いする

糸父「まぁ、今知ったところで問題は起きないからな」

糸、リビングに戻る

糸「さくらはどこの棟手伝うの?」
糸母「1号棟よ。1号棟が姉さんたちで、2号棟が石井くんと沼田くん。で、3号棟が糸」
糸「待って、沼田さんは3号棟じゃないの?」
糸母「だって、新しい子見つからなかったから〜
それに3号棟はお客でもはじめくんたちでしょ?糸一人で平気よ」
糸「まぢかよ…」
糸父「じゃあ、さくらを3号棟で手伝いすればいいじゃないか」
糸母「あ、そうね。姉さんはベテランだし。そうしましょ」
糸「えっ…ちょ…」

糸、2人に背を向けため息をつく

* * *
さくら母「ごめんね、糸くん。ありがとう」
学生服を着た糸に謝るさくら母
* ✲ *

糸「あいつらにはさくらが来ること内緒にしなきゃ」

〇船上(昼)
船は栄島に向かっている。
さくらが船のはしで波風にあたっている

さくら(栄島。母の地元。いと兄、元気かな。優しくて太陽みたいな人、私の憧れ)

さくら母「さくら!何してんの?」
風吹く船上でさくらを呼ぶ

さくら「久しぶりに長居できる。今度こそ、いと兄に会いたいなぁって思いながら風を浴びてる。」

さくら母、心配そうにさくらを見つめる

さくら「お父さんは大丈夫?」
さくら母「茂さんはトイレにずっと閉じこもってるよ。相変わらずね。まぁ、それでも毎年一緒に帰ってくれるから、感謝しなきゃよね。」

さくら「いつも、来たらすぐに千葉のおじいちゃんが迎えに来るけど、今年は来ないよね?」

さくら母「うん、今年は私たちと同じ1ヶ月一緒よ。お手伝いよろしくね。」

さくら「お母さんはいと兄と毎年会ってるよね?私、写真しかないから楽しみだなぁ。」

さくら母「ごめんね、毎年すぐに帰らせちゃって。」

さくら「仕方ないよ、仕事も忙しいのに夏休みも実家のお仕事。私がいたらお母さん達疲れちゃうよ。」

さくら、笑顔で答える
さくら母、さくらを抱きしめる

さくら「いと兄は相変わらず?」
さくら母「ええ、とっても優しい子よ」

〇過去・栄島・神社(夏・夕方)
男子生徒3人がバレーをしてる
男子生徒1人が鳥居の先の階段に向かってくる
階段に座るさくら
男子生徒、深呼吸をする

男子生徒「さーくら!こっち来て遊ぼうよ」

さくら、呼ばれて勢いよく振り返る

さくら「違う。お兄さんじゃない」

男子生徒、拳を握る

過去・おわり

〇栄島・宿舎雅3号棟
糸、ダイニングルームで朝食の準備をする
牧野はじめ(22)が眠そうに入ってくる
はじめ「おはよう」
糸「おはよう」
はじめ「あれ?沼田さんは?てか、いとくん作ってくれたの?」

はじめ、ニヤニヤしながら糸にきく
糸、はじめをかわしながら支度をする

糸「沼田さんは来れないから、俺が3号棟の仕事をやることになった。」
はじめ「あらら、新しい子いなかったの?」

糸、ビクッとする
はじめ、首を傾げる

糸「新しいバイトさんは来るよ。3号棟にそろそろじゃないかな。」
はじめ「おお!ここに来るんだぁ!え?女の子?若い?」

はじめ、糸の肩を組む
糸、はじめの肩を、払う

糸「女の子。だけど…」
はじめ「やったぁ!楽しみだなぁ」

はじめ、席に着く
植野涼(22)と立石一馬(22)が入ってくる

一馬「おはよー!さすが沼田さん!いい匂いするね!」
はじめ「おはー」

はじめ、2人に手を振る
一馬、涼、席に着く

はじめ「今日の朝食は糸が作ったらしいよー。沼田さんこれないらしいよ」
一馬「え?!糸が?!すごいね!まぁ、働いてるからねーすごいなぁ」
涼「朝から元気だなぁ」

糸、朝食を運んでくる。
糸のスマホに電話がかかってくる

糸「これ自分の分取って。そこにコーヒーあるから。」
一馬とはじめ「はーい」

一馬、コーヒーを取りに行く
糸、電話に出る

糸「はい。あぁ、分かった。今から戻ります。」

糸、電話を切る

一馬「家戻るの?」
糸「うん。…新しいバイトの人来たから迎えに行ってくる」
はじめ「女の子だってよ」
はじめ、ニヤニヤしながら2人に話す
涼「沼田さんの代わりって感じか」
はじめ「え?りょうちんも女の子楽しみなの??」
涼「島と違って都会には若い女性なんていっぱいいるから。別に。」
はじめ、ふてくされる
一馬、コーヒーを運んでくる

糸「じゃあ、食べてて。」
はじめ「いってらっしゃーい」

糸、リビングルームを出る
〇栄島・松崎家・玄関
糸、玄関からはいってくる

糸母「久しぶりだねーさくら!」

糸、母の声に反応する

〇栄島・松崎家・リビング
リビングにはソファに座る糸父とさくら父
ダイニングテーブルの方にさくらとさくら母が座っている。
糸母、キッチンにいる。糸が戻ったことに気づく

糸母「糸、おかえり。さくら、久しぶりでしょ?」

糸、恐る恐るさくらをみる
さくら、糸に気付き、立ち上がる

さくら「糸兄?!久しぶり!」
糸「久しぶり。」

さくら、首を傾げる
さくら(なんか、雰囲気変わった?…)

糸母「さくら、悪いんだけど早速仕事しはじめてくれる?姉さんたちが担当する棟の、お客さんはもう出かけてるんだけどねぇ。3号棟は糸の幼なじみだけなんだよー。だから、そんなに気合い入れなくても大丈夫だから!じゃぁ、糸よろしくね。」
糸「あ、うん。気を付けてね。」

糸、父の方に目を向ける

糸「父さんも、ちゃんと治してもらうんだよ」
糸父「もちろんだ!」
糸「じゃあ、さくら行こうか。」
さくら「はいっ!いってきまーす」
さくら母「頑張ってねー」

糸の後を荷物を抱えたさくらが追いかける
さくら母が心配そうに2人を見ている

〇松崎家・付近住宅街
糸を追いかけるさくら

糸(あいつら気づくかなぁ。メガネかけてるから意外に分からないかもなぁ)

糸、難しそうな顔をして歩く
さくら、必死に追いかける

さくら「ちょ、ちょっとまってよ!糸兄!!」

糸、糸兄と呼ぶ声で止まる
糸、後ろを振り返りさくらに駆け寄る

糸「ごめん、荷物もつよ」
さくら「ありがとう。あの…糸兄雰囲気変わったよね。ほら、大人になった感じ!」
糸「まぁ、最後に会ったのはさくらが小学校入学した時だもんな」
さくら「そっか…そんな経ったんだ。そんなに会えてなかったんだ。」

さくら、寂しそうな顔をする
さくら(そりゃあ、変わるよね。)

糸「あ、仕事だけど基本は俺のサポートだから。まぁ、そんなに忙しくないと思うよ。部屋は従業員用の部屋使って。」
さくら「糸兄は?」
糸「俺はお客さん用の方に泊まるから。着いたら泊まってるヤツら紹介するけど…」

糸、さくらを指さす
さくら、糸の指を見る

糸「そのメガネは絶対にとるなよ。」
さくら「え?」
糸「あと!さくらは東京から応募できたバイトで絶対に俺の親戚とか話さないこと。」
さくら「え、なんで?」
糸「ほ、ほら!知られてさくらに手出されたらおばさんに申し訳ないだろ、うん。」
さくら(知られた方が出しにくいと思うけど…)
糸「最後に、名前は教えないこと。空野さんって紹介するから」
さくら「わ、わかった。」
糸「よし。」

糸、1人で納得する
さくら、不思議そうに糸を見る
宿舎雅の3号棟に到着する


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