Daddy
テストで百点を取っても、部活の大会で優勝しても、父はいつも「そうか」という一言しかなかった。

婚約者を家に連れて来た時だって、母は嬉しそうに笑って婚約者に色々質問していたものの、父は何も言わなかった。ただ、黙ってジッと婚約者を見つめていた。

「お父さん、何か言ってあげて!」

母が父の肩を叩く。父は「ああ」と言った後、緊張している婚約者に向かって口を開いた。

「君、酒は飲めるか?」

それだけだった。それだけ訊ねた後、父は口を閉ざした。母は何か言っていたけど、私は何も言えなかった。

小さい頃は、どうして父は私を見てくれないのか、どうすれば見てくれるのか、ずっと考えていた。だけど、高校生の頃に母から父の姉ーーー私の母のことを聞いて、父が私を嫌う理由を知り、父とわかり合うのは諦めた。永遠に父から私は嫌われる。わかり合えない。そうずっと考えていた。でもーーー。

私の目は、父が先ほど出て行ったドアに向けられている。拳を自然と強く握り締めていた。
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