Daddy
嫌われているとわかっているはずなのに……。こんな気持ちを抱いている自分に対し、腹が立つ。悔しい。

そんな私の心を見透かすように、母が話しかけてきた。

「こころ、またお父さんのこと考えてるの?」

「別に……。そんなんじゃない。あの人がどう思っているかなんて、あの人の態度でよくわかってる」

私がそう言うと、母は一瞬驚いた顔をした後、フウッと大きく息を吐く。そして、どこか呆れたような笑みを浮かべながら、「あの人、本当に不器用なんだから」と呟いた。

「お父さんね、本当はあなたの結婚を一番に喜んでるのよ」

母の言葉に、私は「血の繋がっていない子どもが出て行くから?苗字が変わるから?」とどこか刺々しい言葉を言ってしまう。父は私を祝福なんてしていない。ただ、家を出て行くことを喜んでいるんだ。

だけど、母はゆっくりと首を横に振る。そして、「あの人が自分の口から伝えられたらよかったのに……」とブツブツ言いながら、立ち上がってリビングを出て行った。
< 5 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop