Contact〜再会した初恋の君に〜
side 宏和
俺は3階の窓から紗希が帰っていくところを眺めていた。
「お、紗希ちゃん。もう帰るのか」と近づいてきた松本先輩が話しかけてきた。
そうか…今日もここでは会えなかったか…。
同じところで働いているのになかなか会えないものだと、そんな寂しい思いを抱いた時だった。
彼女が出ていくとすぐ後ろに彼女を追いかけるように近づく男がいた。
隣に立っていた松本先輩が声をあげた。
「あれは理学療法士の藍田だな。あいつはお前が流してる噂を聞いても、まだ紗希ちゃんのこと諦めてなかったみたいだな」
あの男が藍田か。紗希の背中に手を当ててるように見え俺は焦った。
「先輩。俺、ちょっと1階の診察室行ってきます」
「お、おい。瀧本…」
慌ててその場を離れた俺に先輩が何か言ってきたが、そんなのは無視した。
俺は私用のスマホを手に取り、急いで1階へ向かう。途中、紗希の番号に電話をかける。
電話の呼び出し音に『早く出てくれ』と願いながら、階段を駆け下りた。