Contact〜再会した初恋の君に〜
「ごめん。俺……本当に紗希のこと、好きだ…」
紗希はしばらく俺の腕の中で静かにしていた。
俺が腕を離すと顔を赤くした紗希が照れ隠しなのか捲し立ててきた。
「そ、そういえば変な噂流さないでよ。真紀子さんに冷やかされて焦ったわよ。それに噂が広まったりしたら仕事がやりにくいじゃない」
「そうか? 隠したままの方が仕事しづらいと思うけど」
「えっ、逆よ。いろいろと訊かれたらどうしようって…。それに、すごく恥ずかしいじゃない」
膨れてみせる顔だって可愛いのを知らないのかと思う。
「そんな可愛い顔して膨れても逆効果なんだけど」
「もう…」
「本当は紗希が帰る前に一目でいいから会いたいと思ってたんだけど、結局会えなくて戻らせちゃったな。悪かった」
「だ、大丈夫…。私も会えて嬉しかったから」
「あぁ…紗希を充電できた。もう、仕事に戻らないとな…」
半歩さがった俺に寂しさを感じてくれたのか彼女は「瀧本くん…」と俺のことを呼び、腕に手をかけてきた。
彼女のそんな行動が嬉しくて「もうちょっと、こうさせて」とギュッと抱きしめる。
どのくらい抱きしめていたのだろう…。
二人の呼吸や鼓動が重なってきたと感じた頃に腕の中にいた紗希がポソリと呟いた。