Contact〜再会した初恋の君に〜
「…好き…」
彼女の小さな声を聞き逃さなかった俺は抱擁を解くと、紗希をまっすぐに見つめた。
「…紗希…。俺も好きだ」
俺は紗希の頬に手を添えると、ここが職場だということを忘れてしまうくらいの熱くて深いキスをした。
ずっとこうしていたい気持ちをなんとか抑え唇を離し、瞳を潤ませる彼女を見つめる。
「ずっと一緒にいたいけど、いつまでも仕事を抜けていられないからそろそろ戻るな」
「うん…」
「ほら、そんな寂しそうな顔されたら離れられなくなるだろう」
俺は指先で優しく彼女の頬を撫でる。
そんな寂しそうな顔するなよ…。
そう思ったけどそろそろ仕事に戻らないと本当にまずい。
断腸の思いで家に帰る紗希を見送った。
紗希が部屋を出た後にガッツポーズを作って、一人で歓びを実感した。
落ち着きを取り戻すため、階段で医局に戻り声をかけた。
「すみません。戻りました」
声をかけると松本先輩が近づいてきた。
「あんなに慌てて出て行って、どんな顔して戻ってくるのかと思っていたのに…。はあ…」
「遅くなって、すみませんでした。先輩、ご配慮ありがとうございました」
いつも通りの自分でいようとポーカーフェイスを作るが、どうしても心の中がウキウキしてしまうため、声が弾んでしまう。