Contact〜再会した初恋の君に〜
「瀧本くん。こんなに高い物買ってもらうわけにはいかないよ」
「付き合いだした記念に贈りたいんだ。それと、他の男を寄せつけないためにもつけてて欲しい」
「ほ、他の男って…。何言って…」
「紗希は自覚がなさすぎる。理学療法士の藍田は紗希のこと狙ってる」
「え? なんで藍田さんが出てくるの?」
「お前…。昨日あいつと一緒に帰っていただろう。あいつはお前が出てくるのを待って、後をつけていったんだぞ」
「藍田さんはそんなことしないよ。仕事が終わる時間が同じなんだから帰りも同じ頃になるのは普通じゃない? それにいつも仕事のことを話しながら駅まで行くだけだし」
「いつも? いつも一緒に駅まで行ってるのか?」
「い、いつもじゃないよ。会った日だけ。毎回じゃないから」
「毎回じゃないって。はあぁ…。そんな偶然が何度も続くわけない。それに今日も…」
「今日?」
「いや、とにかく俺のために指輪をつけてくれ」
店員さんの前だったことを失念していた俺たちは「仲がいいんですね」と言われて、恥ずかしくなった。
何やってるんだ俺…。
こんなに余裕がないなんてな。
とにかく紗希の好みの石が入った指輪を購入し、左薬指につけてもらった。
食事をすませ、家まで送ろうと二人手を繋ぎ歩く。
これだけは約束させないとと思い、握る手を持ち上げて指輪に口づけながら話す。