Contact〜再会した初恋の君に〜
午後からは予定通り二人で買い物に行った。
本来の目的は佳純ちゃんと宮下くんのお祝いを買って終わりだったはずだったのに、気がつけば宏和の家に用意しておきたいと言われた私の物を大量に購入していた。
私の着替えから部屋着、化粧品類に食器など、明日からすぐにでも生活できるくらいになっていた。
それらをいったん宏和のマンションに置きに行き、今は私の家に送ってもらっているところだった。
私の家の近くで車を停めた宏和が呟いた。
「あー。帰したくないな…」
「…え?」
「紗希は帰りたい?」
そんなこと訊くなんて…宏和はずるい…。
そう思ったら、膝の上に置いていた手を握りしめ俯いてしまった。
「あ、ごめん。俺が明日は朝から仕事だって言ったんだよな。だから、紗希が帰りたくないって言ってくれても、帰さないといけないんだ」
「…うん…」
「わかってるんだけどな。いざ家の前まで来たら別れるのが寂しくなったんだ」
私だって本当はもう少し一緒にいたい。でも、宏和の仕事に差し障るようなことがあってはいけないと思う。
「…本当は私も離れたくない…。でも、まだずっと一緒にいることもできないよ。だって…まだ…」
言葉に詰まった私の頬に優しく手を添えてくる。次に言葉を続けたのは真摯な瞳をまっすぐに向ける宏和だった。
「紗希の両親にきちんと挨拶して、二人のこと認めてもらえたら、将来のこと考えてくれる?」
コクンと頷くと、宏和の顔が近づいてきて唇に触れるだけの優しいキスをされた。
「行こう」
家の前でカバンを渡されて、額にキスを一つすると「入って…」と言って、体の向きをクルリと変えられ背中を押された。
「送ってくれてありがとう。気をつけて帰ってね。おやすみなさい…」
私は顔だけを振り向かせて、宏和に声をかけてから家の中に入った。