Contact〜再会した初恋の君に〜
「あ、瀧本。ちょっとこれ見てくれるか?」
「……」
心ここにあらずだった俺は松本先輩が呼ぶ声に気がつかなくて、先輩から再度声をかけられた。
「おーい、瀧本。って、お前…何ニヤけてんだよ」
「あ、先輩。なんですか?」
「どうせ紗希ちゃんのことでも考えてたんだろうけどさ…。後1時間は勤務時間だろう。不謹慎だぞ」
「すみません。ちょっと紗希とこの後どうするか考えてました」
仕事の後に紗希に会えると思うと何を言われても平気だと思えた。
「はっきり言いすぎだ。まったく…独り身の俺の前で俺の憧れだった紗希ちゃんといちゃつくこと考えるなんて…。失礼な後輩だ」
「本当にすみません。で、なんでしょうか?」
「いや…急ぎじゃないからいいよ。紗希ちゃんとの待ち合わせに遅れるようじゃ悪いしな」
「ありがとうございます。本当に先輩って良い人ですよね」
「紗希ちゃんのためだからな」
紗希のためだと言われたが、結果的には俺のためにもなっている訳で、本当にいい先輩なんだよな。
「今度、奢りますよ」
「それとかわいい子な」とお決まりになった台詞で終わった。
先輩の配慮もあり、俺は時間より早く待ち合わせ場所に着くことができた。
この後の予定を考えながら待っていると、いつも待ってばかりの紗希は自分が遅れたと思って小走りで来た。
「時間より早いんだからゆっくり来いよ。慌てて転びでもしたら大変だろう」
「うん…。でも、宏和がいたから…嬉しくて」
本当に可愛いヤツだと思う。
こんなにすぐにまた甘い時間を過ごせるとは思っていなかっただけに、先週のあの可愛かった紗希を思い出しては顔がニヤけていた。
「じゃあ、早く行こう」
「うん」
今日は食材を買って家に帰った。