Contact〜再会した初恋の君に〜
「そんなジンクスに頼らないと紗希ちゃんにプロポーズもできないの? そういうのは気持ちが大事なんじゃない? 宏くんってここぞという時にダメなんだよね」
「ダメとか言うなよな。俺的には必死なんだよ。ブーケ取れたら紗希もその気になってくれるかもしれないだろう」
本人を前にして、なんて会話をしているのかと、横で聞いていて恥ずかしくなる。
「あのね…私はジンクスとかあんまり信じてないよ。それにいつか結婚するなら宏和がいいとは思うけど…。まだ、付き合いだしてそんなに経っていないし…。急がなくてもよくない?」
「俺はすぐにでも紗希と結婚したい」
佳純ちゃんの控室なのに、急に私の両腕を掴んできて、真剣な顔で言われて動揺する。
「なになに、こんなところでプロポーズしちゃうの? だったらブーケいらないじゃない」
「いや、欲しい」
いらないと言った佳純ちゃんの言葉に瞬時に反応を示した宏和を見ていたらしく、開いた扉の向こうから宮下くんの笑い声が聞こえてきた。
「そろそろ佳純の支度が終わると思って来てみたら、お前たちずいぶん楽しそうじゃないか」
「祐貴が宏くんに変なこと言うから、ブーケくれってうるさいのよ」
「佳純。じゃあ、投げないでブーケを手渡ししてやればいいじゃん」
「ブーケをもらったからって次に結婚できる訳ではないわよ。宏くんだけ必死になったって紗希ちゃんの気持ちを無視してたらダメよ」
私を除いて勝手に話が進んでいく。気まずい空気を感じた私は宏和の袖口を掴んだ。
「宏和。ほら、二人きりにしてあげようよ」
「あぁ、じゃあ。俺たちは先に行ってるな」