Contact〜再会した初恋の君に〜
「お先に失礼します」と言って、カウンセリングルームを出て、1階に下り待ち合わせの場所へ向かう。
辺りを見回してみるが宏和はまだ来ていない。
仕事の切りが悪くてあがれなかったのか、それとも急患でもあったのだろうかと心配になりスマホを確認すると、退勤時間近くに宏和からのメッセージが入っていた。
「ごめん。今日は会えなくなった。本当にごめん。今度ちゃんと埋め合わせするよ」
クマが頭を下げているスタンプを見ても、その動きに和むことはできず、金田さんのことが気にかかり不安が過る。
「…もしかして…一緒? なんてことはないわよね…」
金田さんのお父様から彼女をこの病院で学ばせて欲しいと強く頼まれ断れなかったと、真紀子さんから聞いたことを思い出す。
私から見て彼女もかなり強引な人だという印象しかない。
宏和も彼女から強引に頼まれたらどうするの? 断れなくなったりするのだろうか…。
「だめだな…。キャンセルの理由が書かれていないからって疑うなんて。宏和はきっと仕事よね」
時間があいてしまった私は沈んでしまった気持ちを少しでも上向きにするため、洋服でも見に行こうと病院から出て歩きだした。
お気に入りのショップで服を見ていても、考えてしまうのは昼間の金田さんの言葉で、ふとした時にため息が出てしまう。
もはや気分転換どころの状態ではないことに気づき早々に家に帰ることにした。