Contact〜再会した初恋の君に〜

書類整理をし今日の仕事が終わった。周りの人に声をかけ帰る支度を始めると、カバンの中でスマホが震えていることに気がついた。

宏和からの着信だとわかると、何を話されるのか、昨日見たことをどう訊いたらよいのかわからなくて、手が動かなかった。

スマホが静かになったことを確認して席を立つと、吉井さんから声をかけられた。

「田中さん。明後日なんだけど前に話していた飲みに行こうって話があるんだけど、どうかな?」

「明後日…」

「都合良かったら…どうかな?」

宏和と約束している訳ではないし、会いたいと言われてもどんな顔して会えばいいのか分からないから、先に予定を入れてしまおう、そう思った。

「大丈夫です。行きます」

「良かった。他にも俺の同期の奴ら呼んでるからさ。みんな年も近いし女性も気のいい子が多いから、楽しんでくれるといいな」

本音を言えば誰かと一緒に飲みに行っても楽しめそうもない気分だけど、宏和と金田さんのことを少しの間だけでもいいから考えないでいられる時間が欲しかった。

「楽しみにしてます。では、お先に失礼します」

少しばかり笑顔が引きつってしまったかもしれないが、ここでは今の心境に気づかれないよう必死に笑顔を作った。
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