Contact〜再会した初恋の君に〜

部屋を出てエレベーターを待っているとまたカバンの中でスマホが震えだした。その振動を感じて、しばらくカバンを抱え鳴り止むのを待つ。

スマホが静かになったところで、着信履歴を確認するとお昼休みにも着信が数件入っていた。今はまだ宏和と何を話したら良いのかもわからず、今日はスマホの電源を切った。

宏和からの電話にも出たくないなんて…。こんな気持ちになるなんて考えてもいなかったな…。

宏和の声を聞いたらきっとあの時の光景が頭に浮かんできてしまう。そう想像してしまうことが辛かった。

到着したエレベーターに乗り込み、一人になると「私って、本当に成長してないな…」と呟き、そんな自分にがっかりした。

帰宅途中の電車に乗って考えていたのは過去にお付き合いをした時のこと。その人と付き合いだして間もなくして彼の婚約者という女性が現れた。

そして、今回のように私が邪魔だと、彼の本来の相手は私ではないと警告するためにいろいろなことをされた。

「当然だけど、完全にトラウマになってるな…」と声が漏れた。

今回は彼女が一人で直接言ってきただけだから、あの時よりはマシなのよね…。

そうは思っても考えれば考えるほど負のスパイラルに陥りそうだった私は、以前真紀子さんからアドバイスを受けたように違うことに気持ちを向けることを実践しようとした。