Contact〜再会した初恋の君に〜
お店の中にはすでにメンバーが集まっていて、私たちが加わるとすぐに乾杯をして会が始まった。
男女合わせて10人での飲み会なんて初めてで少し不安もあったけど、こうしていろいろな人と話をすることも楽しいし刺激になる。
今日も頭の片隅に引っかかっていたことがしばらくは思い出さずにいられるくらい楽しく会話も弾んだ時間だった。
お店を出て「お疲れ様でした」と挨拶をして駅へ向けて歩いていると、別の所に飲みに行くという人たちから誘われ時計を見て悩んでいた。
吉井さんからも声をかけられた。
「田中さん、この後もよかったら一緒に飲みに行きましょう」
時刻は8時30分、まだ少しの時間なら大丈夫かな…。でも、途中で帰るのはどうなんだろう…と悩んでいた。
少しお酒の入った私の頭は決断力が落ちるらしく、なかなか決められずにいた時にすれ違った人に名前を呼ばれた。
「紗希?」
誰かに名前を呼ばれ一瞬足が止まったが、吉井さんに振り向かれて再び歩きだした。
「紗希…ちゃん、だよね?」
戻ってきたその人に早々に追いつかれ、その人は私の顔を確認すると、懐かしそうにして少し控え目な笑顔を見せた。
「…えっ……」
人の多い往来で突然名前を呼ばれたことに驚き、頭が対応できず心臓が痛いと感じるほどドクンと大きく鳴った。