Contact〜再会した初恋の君に〜
「やっと会えた」
そこに立っていたのは大学の頃の先輩、坂口さんだった。
彼は確か他県にある実家の病院に勤務しているという噂を聞いたことがあった。
吉井さんたちが近くにいるところで無視する訳にもいかず、軽く腰を折り挨拶をする。
「お久しぶりです」
「久しぶり。元気にしてた?」
「あ…。そ、それなりに元気です。先輩もお元気そうですね」
「あ、あぁ…。あの、少し話をできないかな?」
「…ちょ、ちょっと待ってください」
吉井さんに大学の先輩に偶然会ってしまったことを伝え、挨拶をして別れると先輩と話を続けた。
「お待たせしました。話ってなんですか?」
そして、先輩から思いもしていなかった言葉が続けられた。
「ずっと紗希に謝りたいと思っていたんだ。入院中にも家にも会いに行ったけど、会わせてもらえなくて…本当にいろいろごめん。謝ってすむことではないけど、どうしても謝りたかった」
「謝るって…。先輩が何かした訳ではないので先輩から謝っていただくことはありません」
「でも、結果として紗希を傷つけた。本当に申し訳なかった」
ごめん、と言って頭をさげ続けられると、周りの目も気になる。
「先輩。頭をあげてください。いろいろありましたけど、今はちゃんと普通に暮らしています。あんなことが…あのことがあったからこそ今の仕事を見つけられたし、自分の道に満足してます。だから…もう気にしないでください」
「紗希…謝りたかっただけじゃないよ。もう一度君と付き合いたい。そう考えてる」
「せ、先輩。何言っているんですか? だって先輩にはあの人、婚約者がいるじゃないですか?」
「いろいろあって彼女の親の方から婚約破棄を言ってきたよ。僕の両親もそれに納得している。紗希はどう言ったら信じてくれる?」