Contact〜再会した初恋の君に〜

熱い眼差しを向けてくる先輩に私は次の言葉が続かなかった。

「紗希に会いたくて、紗希のことを知り合いに聞いてみたりしたんだ。そうしたら意外なところから紗希の名前を聞けてさ」

「意外なところ…ですか?」

「紗希のクライエントで葛城っているでしょう? 彼女は僕の従妹なんだ。話の中に紗希の名前が出てきて、それで紗希の勤務先を知ることができたんだ」

「葛城さんの従兄…。そうなんですか」

「だから僕は八神総合病院で研修として3ヶ月間勤務させてもらえるようにお願いして、先週から勤務しているんだよ。知らなかった?」

「…知りませんでした」

「紗希のこと…少し聞いた。勤務先の人と付き合っているって。それと、その人のことや噂も聞いた」

「……」

宏和と付き合っていることを知りながら、それでもこの人は私と付き合いたいって言うの? そう思うとなんて答えたらよいのかわからなくなった。

「紗希。紗希と他の女と二股かけるような奴とは別れて僕とやり直さないか?」

そう言って、私の手を握ってきた先輩の手は緊張状態だったからなのか、少し指先が冷たかった。

もうこの人に会っても動揺なんてしないと思っていたのに、お酒に少し酔っていたからか、または…心が折れそうな状態だったからか、すぐに手を振り払うことはできなかった。

冷静に考えたいと思っていたはずなのに…金曜日に再会してしまったあの人とのことで揺れ動くなんて…想定外の出来事だった。

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