Contact〜再会した初恋の君に〜
「だめ、やめて」
先輩に掴みかかりそうな宏和を静止しようと背後から腕を回して止める。
「紗希…」
振り返った宏和が複雑そうな顔を見せた。
「二人ともこんな往来のあるところで言い争ったりするのは止めて。坂口先輩、私は先輩に再会してこの週末に先輩のことをいろいろ思い出しました。でも、どれだけ考えてもやはりこの先の私の人生に先輩と一緒にいる自分が想像できませんでした。だから、申し訳ないですが、お付き合いはできません」
「紗希、もう一度よく考えてほしい…。僕はもう二度と紗希のことを苦しめないと誓う。だから…」
私の方へと伸ばされた手を取ることはせず頭を下げる。
「ごめんなさい。先輩とはお付き合いはできません」
「そうか…。僕が…あの時もっと君のことを守れていれば…。いや、今さら何を言ってもどうにもならないな」
想いを振り切るように首を左右に振り、肩を落とす先輩を見てももう心は揺れなかった。
「先輩。いろいろすみませんでした」
「紗希が謝ることはないよ。それに、いろいろ言って悪かった。ごめんね」
坂口先輩は軽く頭をさげてから去っていった。