Contact〜再会した初恋の君に〜
宏和は私のことをそっと守るようにまだ私の後ろに立っている。
振り返って宏和に向き合うと、まだ自分の気持ちをうまく言葉にできそうもない私は時間が欲しくて逃げる理由を告げる。
「あの…私。お昼休みがなくなってしまうから、これで…」
この場を離れようとした私の腕を掴み、真剣な瞳を向けた宏和が話しかけてきた。
「紗希、待って。話がしたい。他の誰かの言葉じゃなく、噂でもない、俺の言葉を聞いて。それで今後どうしたいかを考えてほしい。だから、もう逃げないで。今夜、会う時間を作ってくれ」
真剣な表情の中に疲れが滲んでいるのを見つけてしまうと、先輩とのことに決着をつけたように、宏和のこともきちんとさせなければと思った。
「わかった…。今日の仕事が終わったら連絡します」
「いや、迎えに来る。仕事が終わったら駐車場に来て、そこで待ってる」
「…宏和。ねぇ、今日はもう仕事は終わっているんじゃない? だったら連絡するから待ってなくていいよ」
「もう避けられるのは嫌だし、逃げられたりしても困るから迎えに来る。車で待ってるから必ず来てくれよ」
夜勤明けだから一度家に戻ると言って帰っていく後ろ姿をただ眺めて見送った。