Contact〜再会した初恋の君に〜

玄関の扉を開け「どうぞ」と先に部屋へ入るように促す。

二人の間にある緊迫した空気を払いたくて、
ダイニングテーブルにコーヒーやサンドイッチを並べていく。

「紗希も食欲ないって言ってたけど、少し食べてお腹を落ち着けたところで話さないか?」

「あ…うん」

「食べるより先に話をした方がいいなら後でもいいけど、どうする?」

「じゃあ…コーヒーをもらっていい? ちょうど何か飲みたいと思っていたの」

「とりあえず食べ物も出しておくから食べたくなったら食べて。俺は紗希に会えてホッとしたからか、お腹が空いていたのを思い出したからいただくよ」

「会えただけで?」クスッという小さな笑い声が聞こえて、俺たちの間にあった緊張感が緩んだ気がした。

紗希の笑顔は俺にとって何より嬉しいと感じられる、まさに癒やしそのものだ。

「今日、紗希が来てくれて良かった。もし、来てくれなかったら…って考えて不安になっていたから、食欲もなかったんだなって改めて思ったよ」

「来ただけでなの?」と驚いたように瞳を大きくした紗希に再び笑顔が溢れる。

「あぁ…。紗希が俺の目の前にいる。それだけで十分元気になれる」

「いるだけでなんて、そんな…」

コーヒーのカップに手を添えたまま固まってしまった紗希の手に俺の手を被せた。

そして、少し糖分補給ができた俺は紗希の手に触れたまま、視線をしっかり合わせて切り出した。
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