Contact〜再会した初恋の君に〜
「宏和はなぜ金田さんのことを名前で呼ぶの? 名前で呼び合う関係なんだもの、ただの知り合いではないって想像してしまうものでしょう。納得できていないことがあるうちは…」
紗希の手が震えていることに気がつき、「紗希」と名前を呼んで彼女の手をしっかりと握る。
「…だから、私は二人の関係に納得できないうちは許すことなんてできない。それに…今の私は自分の気持ちがどちらに向いているかすら自信なくて…」
俺の手の中で紗希の手が強く握られたのを感じ、「うん」と相づちをうって話の続きを聞く。
「金田さんから呼び出されて、宏和のご両親も公認の間柄だと知らされて、私、宏和のことを信じられなくなっていったの。それに…金田さんのこと妬んだり、自分の気持ちまで疑ったりして、とても普通ではいられなかった」
俺の手の中の紗希の手が再び震えだしたのを感じ、紗希も苦しかったのだろうと察した。
紗希が俯いていた顔を上げ真剣な表情を見せたかと思うと、俺と麻帆の関係を訊いてきた。
「金田さんは宏和の婚約者なの?」
「違うよ」
はっきりと否定したものの、まだ疑わしげな様子を感じてしまい、紗希に納得してもらうにはどうしたら良いのか考える。