Contact〜再会した初恋の君に〜
「そのうち止めるだろうって思ってたから…。でも、ある日その子が近くにいた時に先輩に呼び止められて話をしていたことがあって…たぶんそれを見られていたんだと思う。一般教養で同じ講義を受けた後だった…。階段を降りていたら…」
「まさか…突き落とされたのか?」
静かに頷く。
握られた手に再び力が込められる。
「…周りには人が何人もいたはずなのに、その子が押したところを見ていないって言われて…。だから、私が足を踏み外して落ちた…ということにされたの…」
「紗希…」
声が震え涙が溢れそうになるのを堪えていた私を隣に座っていた宏和が両腕を回し抱きしめてくれた。
しばらく宏和の腕の中で彼の温もりを感じていると、少し落ち着きを取り戻し話を続ける。
「それで、気がついたら病院のベッドの上だったの」
「ベッドの上って、怪我は?」
「頭を打っていたし、骨折もしてたわ。背中に押された感触があるのに、自分から落ちたとされて…おかげで人間不信にもなってしまって、怪我が治っても学校に行けなくなってしまったの」
「頭って後遺症はないのか? 骨折も…」
「落ちた段数は多くなかったから…頭はそれほど強く打った訳ではなかったし、骨折も完治してるから大丈夫よ」
普通に生活できているのだから問題ないとわかっているはずなのに、あの時怪我した左腕を動かしてみせると、ホッと一呼吸して安心してくれた。
「それで…学校は?」
「学校はとりあえず休学して、治療することになって…」
苦々しい顔をしていたのだろう。言葉に詰まった私の代わりに彼が続きを推測した。