Contact〜再会した初恋の君に〜
「うん…。もしかして…治療中に退学した?」
「…そう。それで私の心の治療に当たってくれたのが真紀子さんだったの。最初は何を言われても返事すらできなかった私を辛抱強く待っててくれて。少しずつ再起のきっかけを作ってくれたの」
「そうか…」
もう何年も前のことで私自身は過去のこととして処理できていることなのに、今夜初めて打ち明けられた宏和は真剣に心配してくれて、今の私を見てホッと安堵のひと息を吐いてから微笑みを向けてくれた。
「それでカウンセラーを目指そうと思ったんだな」
宏和が私の心を読んだかのような一言を言ってくれたので、気持ちを取り戻し話を続けた。
「それから心理学に興味を持つようになって、新たに心理学部のある大学を受験して大学生に戻ったの。それで真紀子さんのようなカウンセラーになるって頑張ってた」
「だから紗希は真紀子さんのこと、すごく慕っていたのか」
「うん。慕っているし、尊敬してる」
「今日だって真紀子さんが何か言ってくれたんだろう? それがなかったら、たぶん俺と話をしようなんて思わなかっただろう」
今日の終業間際に真紀子さんから『たぶん紗希ちゃんの気持ちはもう決まっているのよ。だから、怖がらずにきちんと話をしなさいね』とアドバイスをもらったことで逃げずに会いに来れたと話したことを言われた。
「まぁ、そうかも…。本当にあのまま人との関わりを拒絶していたら、今の私はないわ」
「うん。俺にとっても真紀子さんは恩人だな。それで紗希は壁を乗り越えて、今は同じように苦しんでいる人を助けようとしてるんだから。すごいな…気持ちを切り替えるのは簡単ではなかったはずだ」
「そんな風に理解してくれてありがとう」