Contact〜再会した初恋の君に〜
今日の午前中の面談が終わったと思った時に椅子の上に残されていたものに目がとまった。
慌てて部屋を飛び出して辺りを見回しながら、お目当ての人を探しつつ急ぎ足でエントランスに向かっていく。
…いた。
午前の外来診療の受付が終了していたため、ロビーにいる人の数は多くはないが、大きな声で呼び止めることは憚れる。
エスカレーターに乗っているお目当ての人に追いつくように足を速めた。
もう少しで追いつくという所で呼びかけた。
「葛城さん!」
呼び声に気がついた葛城さんが立ち止まり、振り返ってくれた。
「田中さん。どうされました?」
少しだけ息を切らしていた私は一度深呼吸をする。それから先ほどまで面談をしていた葛城さんに視線を合わせて、追いかけてきた理由を伝える。
「ふー…。間に合ってよかった。はい、忘れ物です」
彼女の忘れ物のハンドタオルを前に出す。
「あ、ありがとうございます」
「次回でもいいかな、って思ったんですけど、もしかしたらまだ院内にいるかな…と思って。はあ、追いかけちゃいました」