Contact〜再会した初恋の君に〜
真紀子さんとの食事を終えて家に帰った夜、思い出すのは高校生の頃のこと。
初めは遠巻きに見ていただけの瀧本くんだったけど、クラス委員を一緒にするようになって話す機会が増えたことで私にとっては1番近くにいる男子だった。
いつか瀧本くんに聞かれた時は私も医者になると考えていた。
そう将来の夢が同じだったこともあり、私たちはいろいろなことを話し情報を共有していた。
大学にいっても同じ学部になれば、同じような関わりが続いていくだろうと信じていた。
だから、彼が外部進学で地方の大学を受けたと聞かされた時はショックだった。
そのことを聞いてからなんとなく話しにくくなってしまい、卒業までの期間は会話が減ったように記憶している。
卒業式のあとでクラスの皆が最後の別れを惜しむように彼を囲んでいたのを、私は少し離れた場所から見ていることしかできなかった。
「いつかこっちに戻ってくるから、また会おうな」
私のところに来た彼からそう声をかけられて、卒業式で堪えていた涙がこぼれ落ちたことがあった。
そのことに気がついたのかはわからないが、瀧本くんは私の頭にポンと軽く触れてから離れていった。
振り返って見た彼の後ろ姿が最後の記憶だ。
今となってはいい想い出だったな、と懐かしく思うばかりだった。