Contact〜再会した初恋の君に〜
「田中…?」
思わず声に出ていて自分でもハッとしていた。
目の前を通り過ぎていく彼女が一瞬立ち止まり振り返ったように感じた。だが俺に気がつかなかったのか、そのまま歩き去ろうとしていたので、次にはしっかりと呼び止めていた。
「ちょ、ちょっと待てよ。田中だろう?」
「…えぇっと…?」
『えぇっと…』ってなんだよ!…そう思った。
本当に覚えていないのか?
俺はすぐに田中だって分かったのに…。
高校の時もだったが、俺が彼女のことを想っている熱量と彼女が俺に感じているであろう想いにはかなりの差があった。
彼女は俺にとって、たぶん初恋の人…。
親友の祐貴に言われるまで自分でも気がついていなかったが、彼女は俺の高校生活の中で1番特別な存在だった。
俺が家の事情で彼女と別の大学に進学しなければいけなくなり、彼女と過ごした高校生活を振り返ってみて、改めて自分の気持ちに気がついたのが、高3の文化祭。
あの日のことはずっと忘れてはいない…。
卒業式の日に想いを伝えようと決意したものの、離れていくことが決まっていて告白なんてして、たとえ彼女を繋ぎ止められたとしても、会えないなら辛いだけだと考え想いを伝えることをやめた。
そう…あの時は仕方なく諦めた俺の初恋だった。