Contact〜再会した初恋の君に〜

呆然としている俺に『次の予約がある…』なんて忙しなく言ってきたと思ったら、すでにその場を離れていたらしい。

ハッと気がついた時には田中の姿は遠くなっていた。

後で落ち着いて考えれば、カウンセラーの業務は俺たちと違って、決まった時間に昼の休憩時間があるのだから、あの時言っていた『予約』は嘘なのだと、俺から逃げるための口実だったのだと思う。

俺たちが離れていた期間は8年、いったい何があったのか。

気にはなるが、この時はなんて聞いていいものかも分からないまま、彼女の後ろ姿を見送った。

いったい何があって、彼女は医師への夢を諦めてしまったのか。
それとも、本当にやりたいことが見つかり、それがカウンセラーという職業だったのか。

彼女のことを考えながら、医局に戻ると松本先輩が不機嫌な顔をして近づいてくる。
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