Contact〜再会した初恋の君に〜
「そんな顔して見んなよ」
人に見るなと言って、フイと横を向く瀧本くん。そして横目で私を見ては口元を手で隠している。
あっ、あれ絶対に笑ってる…。
そう思って、瀧本くんをさらに睨み続ける。
「それにしてもさ…。田中って普段はおとなしいのに少人数の時だと意外と喋るし、ついでに結構毒舌な時もあるよな」
瀧本くんのククッと笑う声が聞こえた。
まったく悪びれてないんだから…と心の中で毒づきながら、黙々と手を動かす。
今日は保護者会資料のプリント5枚をセットするという単純な作業だった。だだ、2年生の人数分となるとそれなりに時間が必要だった。
早く終わらせようとしばらく黙ったまましっかりと手を動かす。あと2クラス分で終わりになる。そんなことを考えていたときに向かいに座る瀧本くんが私に質問してきた。
「なぁ、田中って家が病院だったよな?」
「うん。そうだよ」
「やっぱり医者になるのか?」
「うーん…。まだはっきり決めたわけではないけど、このままだとそうかな…」
「このままだとって?」
「うーん…。なんか今の私って特にやりたいものが見つかってないって感じで…。父の仕事を近くで見てるから、やり甲斐はありそうだなとは思うの。でも…どうだろ? なれるのかな?」
「まぁ、田中の成績なら医学部に入れるだろうし、医者にだってなれるんじゃないか」
勉強は嫌いではないし、医学部を目指してもきっと大丈夫な気がする。そんな程度の考えで、絶対になりたいと思うほどでもなかった。