Contact〜再会した初恋の君に〜
彼女の後ろ姿を見送り、自分の勤務している部屋に戻ろうとエントランス近くにある院内のカフェ前を通っていく。すると、どこからか私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「田中…?」
ふと呼ばれた声に振り向くと、白衣を着た背の高い、短髪で整った顔立ちをした同年代の男性が立っていた。
田中という名前はありふれた名前だから人違いだろうと思い、再び振り返りそのまま過ぎようと前に足を出したところで、もう一度呼ばれた。
「ちょ、ちょっと待てよ。田中だろう?」
再度振り返ると、私を呼び止めた人が近づいてくる。
その男性を見ては自分の記憶を探る…。
すぐには思いつく人が浮かばず、急に呼び止められたことに軽く不審感を抱いてしまう。
「…えぇっと…?」
この人…どこかで会ったような気がする?
私の名前も知ってるし、やはり知り合いよね…。なんて、顎に手を当て首を傾げ考える。
その男性は不機嫌そうな顔をしてさらに距離を詰めてくる。精悍な顔の眉間にしわが寄ると、若干怖さを感じる。
目の前にきて立ち止まった男性のその整った顔を改めて近くで見つめたが、やはりすぐに思い当たる人の名前が浮かんでこなかった。