Contact〜再会した初恋の君に〜
その後は田中の様子をみながらタイミングを探していたが、結局、告白できないまま3年になった。
高3の文化祭の日、自由参加の3年生はほとんどが帰宅してしまった。
誰もいない教室で机に突っ伏して寝ていた彼女に俺の上着を掛けて、隣の席から幸せな気持ちで見つめていた。
だから、彼女が横に顔を向けた時に目についた可愛らしい唇に衝動的にキスしてしまった。
もっと、と思ったあの時の彼女の柔らかい唇の感触を今でも忘れていない。
「ふぁ…」
「お、起きたか? お前こんなところで寝てたら風邪ひくぞ」
「あ、上着…。掛けてくれたんだ。ありがとう」
彼女が目を覚ました時に平静を装うことが苦しかったことも覚えている。
勝手にキスしたこと気づいていないよな…?
気づかれたらどんな反応をするのだろう…。
もしかしてそのまま恋人になれるんじゃないか。
そんな想像をしたが、二度と口をきいてくれないんじゃないかとも考えて、俺の心の中だけにそっとしまった。
そういえば本当に呆れられるくらい何度も祐貴にからかわれたよな…。