Contact〜再会した初恋の君に〜

「…あ、あの…?」

「本当に覚えてないのか?」

そんなことを言われても思い出せないものは仕方がない。

腕を組み思いっきり不機嫌な顔している相手に怯んでしまうと、二人の間にほんの少し沈黙が流れる。

ネームプレートをのぞき見ようとしたけれど、あいにく角度が悪く名前が見えない。

ここは失礼は承知の上で名前を確認するために口を開く。

「あの…すみません…どちら様でしょうか?」

着任ひと月で複数の診療科を持つこの病院の医師すべてを覚えるなんてことは、よほどの記憶力の持ち主でない限りはありえないと思うから仕方ないと諦めてほしい…。

「お前、田中紗希だろ? 俺、瀧本。瀧本宏和。高校で一緒だっだだろう?」

もう一度必死に記憶をたどる。すると、聞き覚えのある名前にようやく記憶の扉が開いた。
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