Contact〜再会した初恋の君に〜
「なんか紗希ちゃんの話がいろいろと聞こえてきたのでね。真相を探ろうかと思ったんだけど…」
ジッと見つめられて、慌てて視線をはずし仕事の話をし始める。
「今日はどなたの患者さんに付いたらよいでしょうか?」
「あぁ、今日の午前中は僕が担当する人に一緒に付いてもらっていいかな? その人まだあまり上手くできなくて、ちょっと気持ちが逃げてきてるんだよね」
「はい。わかりました。では、患者さんの状態から教えてください」
ここのリーダーでもある藍田さんの指示があるところに付くのは当たり前。藍田さんの先ほどの様子が気にはなったが、気にしている時間もないので準備に取り掛かる。
今日のリハビリの内容を確認していると、なんだか藍田さんがいつもより近くに寄ってきている気がしていた。
仕事に熱心な藍田さんのことだから、きっと私のために一生懸命に教えてくれようとしているのだろうと、変な意識をした自分を律して、その後は真面目に仕事をした。
午後は言語聴覚士の河本さんの隣で患者さんの様子を見させてもらっていた。
彼女の対応は丁寧で患者さんからの信頼関係もしっかりとあり、横で見ていると勉強になることがたくさんあった。
その後はカウンセリングルームに戻り、今日見させてもらった患者さんたちの記録をつける。
「はぁ…それにしても藍田さんの訓練ってすごかったな。河田さんも患者さんのことを良く理解してて…」
ここのリハビリテーション科の療法士は皆よく患者さんの状態を理解している。だから患者さんが挫けそうなことがあっても、また明日頑張ろうと思えるようになるのだろう。
「…なんだか当然なんだけど、私がいてもいなくても変わらないんだよね。療法士さんたちはみな患者さんと上手く関係が築けていて、ちゃんとできてるし…」
はぁ…と、自分の不甲斐なさに小さなため息をこぼしたところで扉が開き、真紀子さんが部屋に戻ってきた。