《マンガシナリオ》最強SPは、愛しい幼なじみを守りたくて仕方がない
第3話 いきなり同居生活
○第2話の続き、学校、教室、朝礼前

〈今朝の騒動で、蒼の存在は瞬く間に学校中に知れ渡った〉

煌莉の席に駆け寄ってくる、まりあ。

まりあ「煌莉、聞いたよー!朝のイケメンくんって、煌莉の新しいSPなんだってね!」

イスに座る煌莉のそばに立って、話しかけてくるまりあ。
まりあを見上げる煌莉。

煌莉「うん。昔の幼なじみなの」

まりあ「…幼なじみ!?なにその恋が芽生えそうな感じ!」

煌莉「そんなのじゃないよ…!蒼は、小6のときにアメリカに行ったきりで、全然連絡なんて取ってなくて。それで、昨日いきなりパパに紹介されただけだから」

興味津々に聞いてくるまりあに、蒼との関係を簡単に説明する煌莉。

まりあ「そうなんだ!あっちの特殊警護部隊専門の学校に行ってたんだ。どおりで、あの中島くんをたやすく押さえつけちゃうわけだっ」

煌莉(中島くんは、アダム科の中でも体術に優れていた。そこをパパが気に入って、わたしのSPとしてつけてくれた。でも、その中島くんを赤子の手をひねるかのように押さえつけてしまう蒼は、さすがあっちの学校でエリートと言われていただけのことはある)

周りの女子生徒たちも、蒼のことを噂していた。



○数日後、学校(昼休み)

〈中島との騒動のこともあって、一気に注目されることとなった蒼〉

校内で、煌莉のそばを片時も離れない蒼。
そんな蒼を見て、かっこいいとキャーキャーと顔を赤らめながら話す女子生徒たち。

〈蒼のルックスもイブ科のお嬢様たちの目を引くところでもあったが、そのSPとしての完璧な行動は学校中の注目の的となった〉
〈それに、蒼が煌莉のSPになってまだ数日しかたっていないが、これまでのSPとは比べものにならないくらい安心感があった〉

煌莉(まるでわたしの行動が読まれているんじゃないかと思うくらい、先読みして危険予測をしてくれる)

蒼に目を移す煌莉。

煌莉(ただ、困りごとが1つ…)

ここ数日内でのことを思い浮かべ、困り顔をする煌莉。

煌莉(それは、だれかれかまわず、わたしに近づこうとする男の子がいれば、即座に確保してしまうということだ)

ありがた迷惑というふうに、ため息をつく煌莉。



○学校、校門付近(下校時)

送迎の車に向かって歩く煌莉。
その煌莉の後ろを歩く蒼。

煌莉が校門にやってくると、待ち伏せしていた他校の男子生徒が煌莉の前にやってくる。
驚く煌莉。

他校の男子生徒「…突然、すみません!この前、偶然ここで見かけたときに…一目惚れしてしまいましたっ!!」

煌莉(だから、付き合ってほしいという告白だった。中島くんのときとは違って、危害を加えるという感じではまったくなかったけど――)

煌莉と他校の男子生徒との間に、瞬時に黒い影が割り込む。
その瞬間、あっという間に地面に押さえつけられる他校の男子生徒。

蒼「確保」

煌莉(そう言って、蒼はその男の子を取り押さえ、あっという間に手錠をかけてしまったのだった!)

その後、煌莉の指示で、他校の男子生徒にかけた手錠を外す蒼。
蒼に恐れをなして、そそくさと逃げ帰る他校の男子生徒。
その光景をあきれた表情で見つめる煌莉。

煌莉(蒼は、ものすごく心強いSPではあるのだけれど…。SPとして完璧すぎるところが、たまに困りものでもある。しかも、蒼がこのことをパパに報告するものだから、大事に発展してしまう…!)



○煌莉の家、リビング(夜)

煌莉が学校帰りに、他校の生徒に告白されたという蒼からの報告に激怒する父親。

父親「学校の外で、煌莉に危険が及ぶなんて…絶対にあってはならん!!」

必死になだめる煌莉。

煌莉「パバ、落ち着いて…!全然、危険なんかじゃなかったよ?ただ、わたしに告白しにきただけみたいで――」

父親「ウチの娘に告白しようとは、どこの馬の骨だっ!100万年早いわっ!!」

顔を真っ赤にして、鼻息が荒い父親。
それを見て、やれやれというふうにため息をつく煌莉。
母親は「オホホホ」と手を口にあてて、のんきに笑っている。

煌莉(こうなることは想像がついたから、蒼にはパパには言わないでって言っておいたのに、これが仕事だからってパパに報告するものだから…)



○次の日、煌莉の家、リビング(朝)

煌莉「…寮生活!?」

驚いて、ナイフで切り分けてフォークで刺したフレンチトーストが口へ入る前に皿の上に落としてしまう煌莉。

煌莉「いきなり寮生活って、どういうこと…!?」

テーブルを挟んだ向かいに座る父親に尋ねる煌莉。
父親は、落ち着いた様子でコーヒーを飲む。

父親「そんなに驚くことじゃないだろう。学校の登下校時にも煌莉に接触しようとする輩がいると知って、パパは心配なんだっ…」

急な寮生活の話に、ポカンとする煌莉。

煌莉「でも蒼もいることだし、大丈夫だよ!」

父親「なにかあってからでは遅いからな。危険は未然に防いでおかないと!」

父親は煌莉のことが心配で心配で、聞く耳を持たない。

煌莉「パパが心配なのはわかったけど…。寮生活っていつから?来月とか?」

父親「いや、今日からだ」

煌莉「あ〜、今日――…って、今日!?」

煌莉(なんと、パパはすでに寮生活の手続きをすませてしまったらしい…)

あきれる煌莉。

煌莉(こうしてわたしは、学校の敷地内にある寮で生活することになってしまった)



○学校、寮(放課後)

煌莉(しかし、それは…ただの寮生活ではなかった)

まるでヨーロッパの城のような外見の寮。
中に入ると、赤い絨毯が敷かれている。
アンティークの家具が置かれている。



○寮、リビング(放課後)

寮の部屋に入る煌莉。
その後ろには、蒼。

煌莉(なんと寮生活は、蒼との相部屋だったのだ…!)

〈警護対象者のお嬢様とSPは、常に行動をともにする〉
〈そのため、寮の部屋も同じ〉

寮と言っても、どこにでもあるような学生寮とは違う。
セレブが通うお嬢様学校のため、寮もそれ相応の豪華な造り。

部屋のドアを開けてすぐに目に飛び込んでくるのは、ソファ、テーブル、シャンデリアなど高級な家具や装飾品の数々。
高級ホテルのスイートルームのような一室。

セパレートの風呂場とトイレ。

相部屋と言っても自室があり、ドアを開けてすぐのリビングが共有スペースとなる。
そして、奥に扉が2つ。
そこが、煌莉と蒼のそれぞれの部屋。

部屋の間取りは、2LDK。

〈食事は、寮の中にあるレストランへ食べに行くことになっている〉

想像以上の豪華な部屋に見惚れる煌莉と蒼。

煌莉「…広いね」

蒼「広いですね」

煌莉(今日からここで、蒼と2人暮らし。…なんたか緊張してきた)



○寮、煌莉の部屋(夕方)

自分の部屋で、荷物の整理をする煌莉。
煌莉の部屋のドアがノックされる。

蒼「煌莉様。夕食までまだお時間がありますから、先にお風呂に入られてはいかがでしょうか」

煌莉「それじゃあ、そうしようかな。蒼は?」

蒼「自分はその間に、部屋に危険がないかひと通り調べておきます」

煌莉(学校の寮だから大丈夫だよと言おうと思ったけど、つい数日前に校舎内で逆恨みで襲われそうになったから、ここは蒼に任せておくことにした)

窓の外を確認したり、家具の裏まで調べる蒼。

煌莉(蒼いわく、盗聴器が仕掛けられている可能性もあるらしい)

そんな蒼を横目で見ながら、お風呂セットを抱えた煌莉は風呂場へ。



○寮、風呂場(夕方)

お言葉に甘えて、湯船に浸かる煌莉。

金色に輝く猫足がついた真っ白いバスタブ。
そこに、いっぱいの泡を浮かせて。

煌莉(蒼は非の打ち所がない、優秀なSPだ。だから、わたしに対してもずっと敬語のまま)

泡風呂に口が見てないくらい浸かる煌莉。

煌莉(わたしたちは幼なじみなのに…。敬語で話されたら、まるで赤の他人のような…。蒼が遠い存在に感じて……すごく寂しい気持ちになる)



○寮、リビング(夕方)

そして風呂から上がると、部屋を調べ終えた蒼が手を後ろで組んで待機していた。

蒼「とくに危険なものはありませんでした」

煌莉「そっか。それならよかった」

1人分のスペースを空けてソファに座る煌莉。

蒼も座ると思った空けたが、蒼はさっきの所で突っ立ったまま動かない。

煌莉「蒼?座らないの?」

蒼「はい。なにかあったときに動けませんから、自分はここで」

煌莉「ここでいいって言ったって、ずっと立ってたら疲れるでしょ?」

蒼「問題ありません。訓練で鍛えていますから」

蒼は、窓の外に目を配る。
スナイパーに狙撃される可能性もあるから。

煌莉(蒼のSPっぷりは徹底されていて、一切気の緩みがない。だけど、逆にわたしが落ち着かない)

煌莉「蒼。もう大丈夫だから、休みなよ?」

蒼「いや、自分は大丈夫です」

蒼は常に警戒していて、煌莉と目も合わせようとしない。

煌莉(蒼は、本当にわたしを危険から守ろうとしてくれているの…?…それとも、蒼にひどいことをしてしまったわたしのそばにはいたくないだけ?)

蒼の気持ちが読めず、不安げな表情で蒼を見つめる煌莉。

煌莉「…ねぇ。たしかSPって、警護対象者の指示には従わないとだめだったよね?」

蒼「できる範囲のことであれば…ですが。急にどうしましたか?」

煌莉「それなら、部屋にいるときくらいゆっくりして。これくらいのお願いなら聞けるよね?」

煌莉の言葉に、難しい表情をして考える蒼。

煌莉(蒼は、昔から頑固だった。わたしのためにと行動してくれるけど、危ないからやめてとわたしが言っているのに聞いてくれない)

昔のことを思い出し、喉がキュッと詰まる煌莉。

煌莉(だから、『あのとき』もそれで…)

目が潤む煌莉。
なんとかこらえ、平静を装う煌莉。

煌莉「ここは、蒼の部屋でもあるんだよ?だから、部屋にいるときは警護対象者とSPの関係じゃなくて、前みたいな幼なじみの関係でいたいな」

蒼「…幼なじみの関係?例えば、どういうものですか?」

煌莉「んーっと…。ここに座って、いっしょにテレビを見るとか?」

ソファの隣の空いたスペースをぽんぽんっと叩く煌莉。
すると、そこへ素直に座る蒼。

蒼がそばにきてくれたことに、感激する煌莉。

煌莉(蒼がそばにきてくれて、うれしかった。だけど同時に、それはわたしが指示したから、SPとして仕方なく?とも思ってへこんでしまう)

緊張と、いろいろな思いが入り混じって、なにも会話が出てこない煌莉。

煌莉「…そうだ!蒼もお風呂に入ってきたら…?気持ちよかったよ?」

蒼「かしこまりました」

煌莉に頭を下げる蒼。
風呂場へ向かう蒼を見送り、煌莉は自分の部屋へ。



○寮、煌莉の部屋(夕方)

ベッドにダイブし、まくらに顔を押しつけてうなだれる煌莉。

煌莉「はぁ〜〜〜………」

たまったストレスを大きなため息にして外へ出す。


煌莉(蒼との同居は緊張するけど、送迎や学校のときじゃなくても蒼といっしょにいれるようになった。だから、これまでの時間を埋めるためにもたくさん話したい。それなのに、敬語でどこか冷たく感じる蒼を前にしてしまったら…うまく話せない)

煌莉の目にうっすらと涙が浮かび、目が潤む。

煌莉(…それがもどかしくてたまらない)

しばらく、ベッドの上でごろごろしていた煌莉。
スマホを手に取って、両親に初めての寮生活のことをメッセージで送る。



○寮、リビング(夕方)

その後、喉が乾いた煌莉は、リビングにある冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、透明なグラスを持ってソファへ。

コップにミネラルウォーターを注ぎ、それを飲み干す煌莉。

するとそのとき、ドアの開く音が聞こえる。
蒼がお風呂から上がってきた。

煌莉「蒼も飲む?」

ミネラルウォーターのペットボトルを持って、蒼を出迎えようとソファから立ち上がる煌莉。

そして、何気なく音のほうに目をやると――。

そこにいたのは、ゆったりとした部屋着のズボンを履いて、首からタオルをかけた上半身裸の蒼。

顔を頬を真っ赤にして、慌てて顔を背ける煌莉。

煌莉「ちょ…ちょっと、蒼…!」

思いもしない展開に、両手で顔を隠す煌莉。

男の人の裸なんて今まで見たことがなかった煌莉は、慌てて自室へ逃げ込もうとする。

――しかし。

蒼「…煌莉様」

背中から声がして、とっさに振り返る煌莉。
なんと、煌莉のすぐ後ろには蒼の顔があった!

煌莉「どっ…どうしたの、蒼――きゃっ…!」

蒼に驚いた拍子に、煌莉はかかとをソファにつまずかせる。
バランスを崩し、背中からソファの上へ倒れようとする。
そんな煌莉の頭を包み込むようにして、瞬時に抱きしめ蒼。

ソファの上で、蒼に覆いかぶされるようなかたちで倒れた煌莉。

柔らかいスプリングのソファに落下したところでなにも痛くないはずだが、そんなことでさえも守ってくれようとした蒼にキュンとしてしまった煌莉。
照れて、頬が赤い煌莉。

煌莉「あ…ありがとう、蒼」

お礼を言って起き上がろうとするが、蒼は上からどいてくれる気配がない。
それどころか、煌莉にグイッと顔を近づける蒼。

吐息がかかりそうなくらいの至近距離で、2人の目と目が合う。
蒼の瞳の中には、恥ずかしさで顔がほてって困惑する煌莉の顔が映っていた。

煌莉「そ…、…蒼?」

蒼「少し静かにしてください」

そう言って、煌莉の顎にそっと手を添える蒼。
その仕草に驚いて、目を丸くする煌莉。

煌莉(…な、なに…この展開…!?)

蒼「煌莉様、動かないでください」

蒼の色っぽい顔が、徐々に煌莉に近づいてくる。

煌莉(もしかして――。これってこのまま…キスされちゃうの…!?)
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