【短】だからもう、俺にちょうだいって。




どうしてか、私の言葉が止められるように強めに呼ばれた。

そして黒田くんの手が持っていた小袋は、なぜか私の前に差し出される。



「…先輩に、作ったんです」


「……え」


「趣味がお菓子づくりとか…キモいと思いますけど、でも、…こうして渡したいと思った人は初めてで、」



こ、れ、は………。

もしかしなくとも、逆チョコというもの……?



「いつも優しくしてくれて、感謝の気持ちも込めてるっていうか…。まあ…そんな感じです」


「…わ、私に…?」


「要らないならいいです、…キモいと思うし」


「そ、そんなことないよ…!」


「っ!」



キモくなんかない、キモいとかじゃない。
むしろ凄いというか、尊敬というか。

お菓子づくりが趣味だったなんてまさかだし、わざわざ私のために作ってくれたことも素直に嬉しい。


そんな私は、深い意味を考えることもせず、とりあえず受け取ってしまったのだ。



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