【短】だからもう、俺にちょうだいって。
22時ちょっと前、彼氏と交わす電話を切ってから、私はドキドキで収まらない心臓をぎゅっとおさえた。
「……もう、結多くんのばか…」
今日は2月11日、金曜日。
週明けの月曜日が本番だというのに。
ちょっとだけ背伸びをしてビターな味付けのシンプルな生チョコを作ろうと思っていた私は、彼氏から伝えられた妄想にそれどころではなくなってしまう。
───そして迎えた当日の朝は。
私が教室に入ると、ガタッ!と音を立ててまで後ろの席に座っていた彼が立ち上がった。
「結多~、彼女からのチョコ貰いてえからって必死すぎだっつの!」
「当たり前だ。全世界、いや全宇宙に生中継の準備してるから俺」
「はははっ!なに言ってんだよお前!」
結多くんにはお昼休みに渡すね、と言ってあった。
だから私は軽く微笑んでから、自分の席へと静かに向かう。